ニポンゴ、アルヨ。
おもうこと、思うことや想うこと。
Yarned
年に一度の毛糸市
町から村から、となりの山から
こぞって競うひつじたち
海辺のひつじのお墨付きの
海がまるごと染みこんだ毛糸
ほのかに涙あじ
むらさきヤギとぼく
あるさむいふゆのあさ
がっこうにつくと、ぼくのせきにむらさきのヤギがすわっていた
ぼくをみると、むらさきのヤギは「ケケー」といった
そのうちせんせいがきて「すわりなさい」といった。
しかたなく、ぼくはむらさきのヤギのひざにすわった
むらさきのヤギはほかのだれにもみえないみたいだ
さんすうのじかん、せんせいにあてられたとき、むらさきのヤギはぼくのみみもとで“マイウェイ”をハミングした
ぼくはおもわずわらい、ろうかにたたされた。
こくごのテストのときには、ひずめでつくえをひっかいていやなおとをたてた
しまいには、テストようしをたべられてしまった
きゅうしょくのときにはむらさきのヤギはチョコバターをぜんぶなめ、みそしるをひっくりかえした ぼくはなきたくなった
それでもむらさきのヤギはぼくのかおをみて「ケケー」といった
たいいくのじかんがきた 苦手なとびばこだ
おなかがいたいふりをしてけんがくしようとしたが、むらさきのヤギがぼくのせなかをおすので しかたなくれつにならんだ
むらさきのヤギとぼくのばんがきた
むらさきのヤギとぼくはおもいきりいきをすい、じょそうをつけて、
とんだ
が、むらさきのやぎとぼくはおなかでちゃくちしたので、しっかくになった
でも、ぼくははじめてとびばこ五だんをとんだのだ
「どうやってあんなにとんだんだよう」
みずのみばで、クラスのあまりしらない子たちがはなしかけてきた
むらさきのヤギとぼくは「ケケー」といい、みずをまえばのあいだからとばした
みずとばしがっせんのあと、ぼくたちはみんなろうかにたたされた
きょう二かいめだ ぼくたちはせんせいのうしろすがたに「ケケー」といってわらった
ぼくたちは、あしたからきゅうしょくをいっしょにたべるやくそくをしてかえった
いえにかえると、むらさきのヤギがいなくなっていた
「ときどきなら、またきていいよ」
ぼくはこころのなかでむらさきのヤギにいったのだった
月のジャッカロープ
月が満ちるとジャッカロープは忙しい
もくもく蒸したて
まっしろい
甘くてもちもち
餅をつくジャッカロープ
お正月には悲しいニュース
今年も6人お餅をのどにつまらせた
ジャッカロープはのどにつまらないお餅を考えた
バターにオリーブオイル、ラードなんかも混ぜてみた
通販で鯨油を注文した次の日に
動物愛護協会が月までやってきた
ひづめのうた
つちぼこりの青テント
わたしは老いたつなわたり
スポットライトの輪の中を
かたくけば立ったつなを踏む
おもいだすのはやわらかくひづめをくすぐる青い葉
つゆにしめった土のにおい
いつまでおぼえていられるかしら
はくしゅかっさいのお客さん
つなわたりの涙には気づきません
ある犬の夢
犬はテーブルの上のチーズのにおいに気づいた。目に見えるような気すらした。おすわりをしてみた。ふせをした。遠吠えもした。でもチーズは犬の口には入らなかった。
その夜、犬は夢を見た。
犬の背中には、羽が生えていた。ちいさな、ビロビロとした、コウモリのような羽だった。犬はうれしくなってキッチンに走った。深呼吸をすると、ばたばたとはばたいてみた。すこし体が浮かんだので、ありったけの力を羽に込めてばたばたとした。テーブルの上がもうすこしで見えそうなほど体が浮かんだが、チーズには届かなかった。犬は夢中で空を蹴り、宙を掻いた。ちいさなコウモリの羽は犬の体がテーブルの上にとどくほどの力がなかった。犬はまた、チーズを食べる事ができないまま寝床に戻った。
朝、犬が目を覚ますと羽はなくなっていた。そのかわり、犬の皿のなかには大きなチーズのかけらがありましたとさ。